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「アナとひきこもりの女王」は何故、誤解されたのか?

公開日: : 最終更新日:2014/06/18 カルチャー, 女性論

注:この記事には多少のネタバレがあります。

「アナと雪の女王」の観客動員数が1757万人に達したそうで、サウンドトラックCDの売り上げ枚数も100万枚に達するとのことだ。

http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20140613_653244.html

これだけのメガヒットとなると、決まって論じられるのが「ヒットの秘密」。

この作品が何故、これほどヒットしたのか? ということについて多くのメディアで、多くの人たちが理由を分析している。

その主流というか、多くの分析、批評のベースとなっているのが「自己肯定」というテーマだ。

「この物語は自己肯定がテーマ。そこが受け入れられた」というものだ。

しかし、この見方は間違っていると思う。

「アナと雪の女王」はけっして自己肯定の話ではない。

それどころか、むしろ自己否定の話だ。

いったい、何故、多くの論者が勘違いしてしまったのか?

それは、やはり例のテーマ曲にあると思う。

原題「Let It Go」、邦題は「ありのままで」。

この大ヒット曲の印象は強力で、テレビで紹介されている映像などを見てるだけだと、この映画のテーマは「ありのままでいい」ということかと思ってしまう。

しかし、映画を見てみれば分かるが、実際にはそうではない。

この曲が歌われるのは女王エルサが、アナ、そして臣民たちから逃げ出し北の山にたどり着いた後、自らの心を閉ざすように魔法の力で氷の城を築く。その時に歌われる曲だ。

つまり、この歌は自己肯定の歌ではない。

自分を閉じ込める歌。心を閉じることが「ありのままの自分の姿」であり、それでいいのだと歌う。

こんな歌が、自己肯定の歌であるはずがない。

そして、エルサの冷え切った心は、北の山だけでなく、王国全体を氷の世界へと変えてしまう。

そんな状況を変え、国民を救い、姉を救うためにアナは氷の城にやってくるが、エルサは誤って魔法によりアナの胸を傷つけてしまう。そのことでアナは、徐々に心臓を凍ってしまい、最後は死んでしまうという状態に陥る。

その後、エルサは王国を乗っ取ろうとする他国の王子に殺されかけるが、瀕死のアナが身を投げ出してエルサを救う。

その時、エルサは真実の愛に気づき、心を開く。

開くことで、閉ざされた心も解け、国を覆っていた氷も溶け、国もエルサもアナも臣民たちも、すべてが救われる。

つまり、この映画は「ありのままでいい」という映画ではなく、「閉じた心を開いて変われ」という映画なのだ。

まったく逆だ。

それなのに、何故、多くの論者やメディアが、この映画は「自己肯定」の映画だと評しているのか?

それはたぶん、映画を見ないで評しているからではないか?

というのが僕の見立てだが、果たして真相はどうか?

まあ、「自分の魔力を恐れて心を閉ざしたエルサ」が最後に、そんな自分を受け入れて女王としての自覚も目座得るわけだから、その意味では「自己肯定」の映画だと言えなくもないが、やはりメインは最後の、アナの献身によってエルサの心が変わるシーンなので、これはやはり「自己肯定」というより「自己変革」の物語だとするのが妥当だと思う。

そもそも、エルサの自己変革がなければラストの感動もなかったし、王国を氷の世界から解き放つ方法も分からなかったわけだ。

いつまでもエルサが「ありのままでいいの」と歌っていたら(考えていたら)、アナは死んでいたし。王国はそのまま永遠に氷の世界に閉ざされたままで、映画(物語)としても成立していないわけで、その意味でもこの映画を「自己肯定」の物語とするのは無理があると思う。

 

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