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介護で閉ざされる若者たちの未来と「殺される権利」について

公開日: : 社会保障, 考察

今夜のNHK「クローズアップ原題」のテーマは重かった。

介護で閉ざされる未来 ~若者たちをどう支える~

祖父母や親の介護のために、学業や仕事の継続を諦めてしまった大学生や入社したての若者たちの姿をレポートしたものだ。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3515.html

番組ではたとえば、病気のために寝たきりになった父親を、母親と一緒に介護していたが、その母親もガンを患い、大学をやめて両親の世話をするしかなくなった若い女性が紹介されたりする。

あるいは、認知症の母親の介護のために、入社一年目の会社を辞めなければならなかった若者が紹介される。

政府の調査では、このような「介護に携わっている15歳〜29歳の若年介護者は17万人以上、いるという。

このような若者のほとんどは事実上。「介護によって、自分の夢をあきらめたり、将来が閉ざされた若者」と言ってよいだろう。

介護が若者の未来を奪っているのだ。

社会の高齢化に伴い、このような若者はますます増えることは確実だ。

早急な国家的対策が必要なことは言うまでもない。

その対策として番組では、イギリスの若年介護者対象のケア・システムを紹介する。

若年介護者を専門のカウンセラーがカウンセリングしたり、当事者の若者同士の語り合いの場をセットしたり、、、

それはそれでよいのだが、番組では決して伝えないことがある。

これはNHKがどうとか、この番組がどうとかではなく、日本のマス・メディアではまず語れないことだ。

それは、欧米では寝たきり老人はいないということだ。

何故か?

それは、たとえば、

イギリスでは、自力で食事できなくなれば、それ以上は治療しない

からである。

ちなみに、ニュージーランドではある年齢(うろ覚えだが、たぶん75歳だったと思う)を超えると、病気になっても治療しないという。

つまり、この番組でも紹介されているが、日本で多く見られるような、自分では食事もできない、排泄もできない、子どもや孫のことも認識できず、会話も成立しない、というような老人を介護する必要はないということでもある。

そういう話を聞いて「酷い話だ」と思うかもしれない。

しかし、年を取ってみれば分かるが、いざ自分が自力では食事できない、子どもの顔も分からない、知的活動も運動もできないという状態になった時、余計な介護はして欲しくない。

むしろ、殺して欲しい。

そう思う。

人間に「死ぬ権利」があるかどうかは、難しい問題だ。

しかし、もしかしたら「死ぬ権利」と同様に、「殺される権利」というものもあるのだろう。

自ら命を絶つこともできなくなった時、自分の尊厳を守るために、そして愛する子どもや孫の未来を守るためにできること。それは、誰かに殺してもらうことだ。

そが医者なのか、他の専門職が必要なのか?

もしかしたら、介護士ならぬ「(死の)介助士」のような資格、職業が必要となるのかもしれない。

もちろん、子どもや孫の未来を犠牲にしてでも生きながらえたいのか、潔く命を絶とうと思うかは個人の価値観による。

その意味で、「殺される権利」を制度的に日本の社会に確立させるのは難しいだろう。

しかし、もう誰の目にも社会保障が成り立たなくなることが明白である以上、せめて欧米並みの「死の基準」を取り入れることは必要だろう。

それは若者たちの未来を守り、社会を守るためでもある。

しかし、なによりも、自分自身の「人としての尊厳」を守るためなのだ。

そのことの重みと意義の深さは、日本人なら誰もがDNAレベルで分かっていることだ。

人の命は地球より重いというが、人の尊厳はそれ以上に重いのだ。

 

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